奥多摩(三峰口〜雲取山方面)2012.08.30〜31 第4話


「キャーッ!」



叫び声でガバッと目が覚めた。「どうしましたお姉さんッ!」
・・・そうだ、これは女性の叫び声ではない。鹿の鳴き声だ。
1:35、僕は長沢背稜でひとり夜を過ごしていた。



温度計を見るとテントの中は19度。肌寒い。
そういえば寝袋を出さずに寝ていた。キルトを広げてかぶる。



「キャーッ!」
鹿の鳴き声が四方八方から聞こえる。
そしてそれはだんだんと近づいてくる。
一度、テントがパサッと揺れた。
恐くてヘッドライトを点けた。鹿が走って逃げて行った。ごめん。



「ギギギーッ!」
な、今度は何だ。たぶん鳥だ。



正直、やはり恐い。
でも、自分も鹿や鳥と何も変わらない、同じ生き物なんだなと感じることができる。
「ちーっす、ちょっと間借りさせてもらってます。」




キルトに包まり、動物たちの息吹を感じながら、いろいろなことを考えた。



4:12、そろそろ起きよう。
コーヒーを飲みながら日の出を見よう。この時間が大好きなんだ。




静かな朝、バーナーの音が優しく響く。




4:39、東の空がオレンジ色に染まり始めていた・・・。
さあ、日が昇るよ。しかし、雑木林のド真ん中に僕はいるのだった・・・。



つづく