トイレの神様

駅のトイレに入ったら、混んでいてすべて使用中だった。
仕方なく待っていると僕の後ろにもやがて5〜6人の列ができた。
僕を含め皆、その表情から、一刻を争う緊急事態であることが伺える。



今まさに、この場にいる者たちの願いはただひとつ。「頼む、早く出てきてくれ!」



なかなか空かない個室のドアを前に、僕たちは同じ時間を過ごし、その場に何か一体感のようなものが生まれつつあった。
「みんな、あと少し、あと少しだ!」



すると一番奥の個室から、優しい水のせせらぎが聞こえた。トイレが流れる音。
そう、それはもうすぐ扉が開く合図だ。
まるで天使が舞い降りたかのような瞬間だった。



「みんなごめん、先に行かせてもらうよ。大丈夫、他の個室もきっとすぐに空くから・・・、
いや、でもこれは仕方のないことなんだ。僕はみんなより長い間、待っていたからね。ではお先に失礼するよ。」
と、僕が一歩を踏み出した瞬間、5個あった個室のドアが全部一斉に開いたのだった・・・。